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社長ブログ

2023.04.07

侍ジャパン優勝!

年度初めの晴れやかな時期を迎えた。東京では、桜の開花は3月中旬と例年よりも早かったが、4月に入ってもまだまだ咲き誇り、4月最初の週末も花見客で都内は賑わいをみせていた。コロナが終息を迎えて(いると信じたい)、4年ぶりの賑わい。この間のうっぷんを晴らすがごとく、外国人も日本人も笑顔に満ちた花見。気のせいか、桜自身も例年より長い間散らずに咲いていたかもしれない。この3年間は囲んでくれる人もいなく、ひょっとしたら寂しい思いをしていたか、久々に人々に囲まれた桜もテンションが上がり、早々に散るまいと頑張ってくれたのかもしれない。

その桜が満開で祝ってくれたのは、3月のWBC侍ジャパン優勝。東京ラウンドからすべての試合で話題や感動があり、準決勝メキシコ戦の球史に残る死闘、野球というスポーツの醍醐味が凝縮された試合、そして決勝9回表ツーアウトからのクライマックス。緊張と歓喜の連続で大会が終わったあとは観戦疲れとロス感に覆われたが、本当に素晴らしい感動的な時間を過ごせた。

映画か漫画か、いや漫画でも描けないとも言われた出過ぎのストーリーだった。思えば2月の宮崎キャンプでのダルビッシュの存在感と周囲の盛り上がり、本戦各試合での選手の躍動、食事会や試合前円陣挨拶など試合内外で選手の個性が伝わり、時間が経つにつれて魅力が高まる。話すときりがないが、個人的に印象に残ったのは本戦に入る前、遅れて合流した大谷翔平がチャーター機で名古屋の空港に降り立ったときのシーン。その姿は完全にスーパースターのそれだった。その後の名古屋ドームでのバッティング練習の規格外の打球、大阪に移動しての初めて出場した強化試合、最初の打席からいきなり2打席連続3点本塁打(ヒザを地面についてのホームランと、バットが折れてのホームラン)。ここまですごいのか、大谷は…感動というより畏敬の念、戦慄を覚えた。そして本戦の活躍は周知のとおりだ。

ところでWBC(World Baseball Classic)の目的は、野球を世界に普及させるためとしている。他の球技チームスポーツに比べて、野球人口は世界的に少ない。アメリカなどの中南米諸国と日本などの東アジアの国々が中心。オランダやイタリアという欧州の国もWBC常連だが、オランダはカリブ海にあるキュラソー島やアンティル、アルバというオランダ領の島々の出身選手がほとんど、イタリア代表もそのほとんどがアメリカ生まれである。まだまだ普及地域は限定的だ。

世界的スポーツではない野球だが、日本人にとっては国民的スポーツ。数多くある球技のチームスポーツにおいて、世界大会で優勝が狙えるのは野球のみ。大会規模は違えど、サッカーやラグビー、バレーやバスケは、現段階で優勝を予想するのは難しい。かつてなでしこジャパンがW杯で優勝したが、これは本当に価値ある優勝だった。戦前は優勝を期待していた人はそこまで多くなかったはずだ。それだけに、なでしこの活躍は感動した。

さて、なぜ侍ジャパンは優勝できたか。個人ではなくチーム(組織)という視点で考えたい。

キャンプ地(宮崎)や予選ランウド(東京)が日本ということもあっただろうが、大会前から大盛り上がりだった。グッズ販売は早朝から長蛇の列。メジャー組が加わるということで、過去の大会よりも期待感は高まる。実力的にも前評判は高い。今回の侍ジャパンは、当たり前のように国民に優勝を期待されていた。自分も大会前から高ぶる気持ちを感じていた。(それを煽るマスコミの存在もあった)。

ただ選手コーチ監督、つまり当事者からすると、期待されているということはそれだけプレッシャーになる。特に今回は選手の平均年齢が26.5歳と過去に比べても若く、経験が浅いメンバーが多い。しかし実際のところは緊張を全く感じさせず、むしろ皆が一人の野球少年に戻り、試合を心底楽しんでいたように見えた。大谷翔平の普段見せない無垢な表情や皆を鼓舞する闘志も、大会中何度も見た。緊張して萎縮する選手は誰もいなかった(一人、三冠王村神様が目の前の大谷の異次元の凄さを目の当たりにして調子が出なかったが、最後はさすがだった)。そしてその根底には、栗山監督と各選手コーチ裏方メンバーとの信頼関係、大黒柱で最年長のダルビッシュ自らがキャンプから若手目線で接した姿勢、そして大谷やヌートバーら現役メジャー主力選手のキャラとプレースタイルがあった。チーム集結(キャンプ開始)は本戦が始まる約3週間前。この間、選手同士の食事会も話題になった。チームが結束するために必要な時間だった。

言葉の持つ力も偉大だ。「別に戦争に行くわけではないんだから、楽しもう」というダルビッシュの言葉や、決勝戦前の円陣の憧れをやめましょう、憧れを捨てて勝つことだけ考えて」の大谷の言葉は、本人らの考えていた以上に周囲は勇気づけられただろう。「楽しもう」とか「憧れを捨てる」という言葉は、いかにも主体的で能動的であり、周囲の心は動かされ、一体感を育んだ。

チームとしてのパフォーマンスを最大にする準備は、戦いの前にはすでに出来上がっていた。信頼関係を築くための準備、そして言葉の力。これらが勝因に挙げられるだろう。他国との最も大きな違いだったに違いない。

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