映画館に出向くことがない理由の一つに、今の時代いつでもどこでも鑑賞できる、というのがある。ネットフリックスはテレビでもPCでもスマホでも観れるし、最新作をすぐにという人や臨場感を求める人でなければ、自宅がいつでも映画館の代わりになる。ネトフリ専門ドラマが意外と面白く、しかも有名どこの俳優が多く出演しており、映画よりも優先して観ている。
先日鹿児島出張の際、フライト中に久々映画を鑑賞した。ここ数年海外に行く機会がなく、最近のフライトはもっぱら国内便。最も時間を要した沖縄(那覇)までも、東京(羽田)から3時間程で到着する。エコノミークラスでは座席別モニター(映画やニュースなどが鑑賞できる)はほとんどない。たまたま先日の鹿児島からの帰路の便にはモニターが付いており、2時間少々かかるフライトであったのと、あまり眠くなかったので(いつもの出張帰路はたいがい疲れていてフライト中はほぼ爆睡している)、なんとなくモニターをいじっている内に映画を観ることとした。その際、数年前アメリカに行った時の行きのフライトで、「ビリギャル」(有村架純さん主演)を観て衝撃を受けたのを思い出した。現在の有村さんのイメージとは正反対の好演だった。フライト中の映画鑑賞はそれ以来。
自宅が映画館となり、スクリーンがテレビやPC・スマホの画面にとって代られる。ここ数年の話だ。ストリーミングの発達、その基盤となる通信環境、データセンターによる情報の処理能力や保存能力の劇的な増加によってもたらされた。昭和に生まれ、平成が過ぎ、令和を生きているが、こうも劇的に変わったのはここ5年くらいの話だろう(実際はもっと前からかもしれないが)。しかしなぜか映画館でポップコーン片手に映画鑑賞した頃がかなり懐かしい。ずいぶんと昔のような気がする。映画館は、今の世の中にも欠かせない娯楽施設として生き残っているので、たまには懐かしさを求めて出向くのも一考かもしれない。
ちなみに、今回観たのは「オリエント急行殺人事件」。原作はアガザ・クリスティー、世界的な推理作家。1974年に初めて映画化され、2017年にリメーク版が公開された。今回鑑賞したのはリメーク版。
出演者は今を時めく俳優陣、大迫力なシーンもあり、映画としては完全に現代を象徴するが、描かれているストーリー、人間模様は初版もリメーク版も同じだ。名作は色あせない。
最初のシーンが、ユダヤ教の聖地エルサレムの「なげきの壁」に祈るユダヤ人。かの地で現在起きていることに思いを馳せ、名作を堪能した。いつもより充実したフライトだった。