2ヵ月近く前になるが、港運事業部所属の潮見営業所(船橋市)の荷役作業を視察した。
この営業所では、鋼材(鉄製品)を中心とした重量物の沿岸荷役作業(船から陸に荷揚げする仕事)、倉庫に保管した後ユーザーに届ける(運ぶ)、荷役・保管・輸送の一連の物流サービスを行う唯一の事業所である。
扱っている荷物が荷物なだけに、何よりもまして重要なのが安全の確保。一つ間違えば命取りになる仕事。過酷な暑さの中、集中力を維持して従事している社員に感謝したい。
鋼板(鉄製品)を船から荷揚げし、トラックに乗せる様子。右写真の鋼板の重さは1tを優に超す。
大きく3つの事業(運輸・倉庫・港運)のある当社の中でも、歴史が古い港運事業。
大正12年、結城運送店として馬車輸送から始まった当社は、昭和に入りトラック輸送に逐次切り替えていったが、その後の昭和8年、艀(はしけ)を11隻(1,600トン級)を保有し、社名も「結城回漕店」と改名、当時の満州国に接する関東州大連に支店を設けて、三井物産扱いの関東州全域の砂糖の運搬に従事したこともある。沿岸荷役の仕事は、その頃からの仕事だ。一時とは言え、社名も「回漕」と名乗る程、海運とはゆかりがある。
現在主力の石油製品(エネルギー関係)、アスファルト、鋼材も含め、基礎産業(かつての重厚長大と言われた産業)の物流を主に担っている当社としては、お客様に恵まれて長いお付き合いをさせて頂いている。一方で、国内市場を見れば長期的に市場縮小を免れられない。馬からトラック、艀と輸送の手段を変えてきた歴史をあらためて学び、時代の変革への対応力を再び発揮する時期に来ている。その対応力は健在であろうか。腐ってはいないか。自問自答する日々だが、時はけっして待ってくれない。
ところで、昨今、ドライバー不足・人手不足が広く知られ、「物流クライシス(物流の危機)」という言葉も叫ばれているが、一般の人は「物流」という言葉にどのようなイメージを持っているだろう。
「物が流れる」「物を流す」と書くが、要は「物を、それを欲している人・会社に運ぶ、届ける」ということは、普通に理解しているだろう。
しかし、一つの物を「運ぶ」「届く」の裏側にはたくさんの機能、そして人が介在していることは、まだまだ理解されていない。地震などの自然災害発生後に、コンビニに商品がない、ガソリンスタンドにガソリンが届かない、という状況になって初めて、「物流」のありがたさに気付く。 「物流」は、一般の人にとって、日常生活では目に見えない。見えるのは道路で走っているトラックの姿だけ。トラック=「物流」のイメージとなるのは当然である。
扱う荷物によっても様々だが、当社のような石油や鋼材などのエネルギーや重量物の物流においては、荷役作業や倉庫での保管、入出庫は一般消費者の目には届かず、やはり公道を走っている時のみ目に留まる。そこでイメージが作られる。
物流は、産業活動と国民生活を支えるライフラインであり、インフラである。一事業者として、物流という事業の価値、社会的役割を広く外部に発信し、物流のイメージ向上を追求していかなければならない。
「物流」の仕事に矜持を持つ。その矜持にふさわしい社会的地位を、「物流」のイメージ向上の結果としてつかむ。矜持と社会的地位。どちらが先でどちらが後ではない。相互に呼応して昇華していくものである。