コロナ禍の3か月が過ぎ、あっという間に6月。今年も半分がもうすぐ終わろうとしている。
本来であれば今頃は、いよいよもってTOKYO2020という世界有数のビッグイベントが間近に迫り、胸の鼓動が高ぶるさまを感じていただろう。東京都が推進していた交通渋滞対策であるTDM(交通需要マネジメント)・TSM(交通システムマネジメント)、移動抑制のためのスムーズビズ(テレワークや時差出勤など)に向けた取り組みが本格化する時期でもあった。
コロナ禍はそのTOKYO2020を今のところ1年延期させ、一方で皮肉にもテレワークを中心としたスムーズビズの普及を促した。
当社でもZoomを活用したWeb会議やWeb朝礼を試行、一定の効果は実証済だが、やはり議論により結論を導くような会議には不向き。年度初に計画していた社内宿泊研修や集合教育ができず、現場任せの安全活動になっている。
東京都は、政府の緊急事態宣言解除に伴い、6月1日より自粛レベルを一段階緩和し、その結果明らかに街に人が増えてきた。「気の緩み」という経済財政担当大臣の表現は国民の間でもその評価にひと悶着あったが、個人的には的を射た表現だと思う。もう少しの辛抱を心掛けたい。
自粛生活、巣ごもり消費を支えたのがネット通販。そして特に料理の宅配サービス、配達代行サービスの「出前館」や「ウーバーイーツ(Uber Eats)」だ。
地域の違いこそあるが、本社のある東京江東区では、ウーバーイーツのロゴの入ったバッグを背負い、自転車やバイクで配達する人を見ない日はない。スマートホン片手で注文でき、決済はすべてアプリ内。現金の受け渡しは一切ない。配達員がどこを走っているのか、あとどのくらいで到着するのかもアプリ内で確認できる。そして感染リスクを抑える観点から、「置き配」といって玄関先に置いてもらい直接的な接触を避けるサービスも加わった。まさに、環境の変化に迅速に対応したサービスの創出である。
一方で、人の荷物を扱い、配達というサービスの対価として運賃をもらうという観点で言えば、我々トラック運送業界と同じである。緑ナンバートラックは、一定の安全基準を国に認められ、ビジネスを行っている。対して、ウーバーイーツは、配達手段は自転車か原付バイクに限られているので、貨物自動車運送事業法に抵触しない。宅配を中心としたトラック事業者は競合相手の可能性もあるが、規制の違いがあって同じ土俵での勝負になっていない現状がある。
公道を利用してビジネスを行っているのは同じ。道路交通法は同じように適用されている。しかしながらウーバー配達員は、配達の回数によって収入が決まるので、一部の人は無茶な運転をしていると言われる。信号無視のみならず、高速道路を自転車で通り、それがニュースとなった事例もあった。配達員はその後捕まったが、高速道路利用の理由を「時間短縮のため」とためらいもなく話したという。
ここまでくると個人のモラルの問題だが、規制と効率のせめぎ合いが、このウーバーイーツを通じて顕在化する。人口減少や高齢化社会を迎える中、シェアエコノミーや代行サービスはこれからの社会課題を解決するキーワードであるのは間違いない。
規制緩和による効率化と消費者の利便性向上、規制強化による事業者の適正化と安全性向上。
はっきりしていることは、我々の物流業界はこの相反する2つの課題の真っ只中にいるということだ。
人手不足という大命題が先行していたこの数年間であったが、コロナ禍は、その後ろに見え隠れしていたこの2つの課題を一気に全面に押し出した。