プロ野球の世界では、開幕戦を「たかが143分の1」という人と「特別な試合」という人といるが、自分の考えは後者の方だ。気持ち新たにシーズンを迎え、ワクワクドキドキしながら望む試合、やはり他の試合とはなにか違う気がする。
さて、4月1日都内。桜は満開だが冬に戻ったかのような寒さの中、新年度がスタートした。本社では、初めて社会人として入社する2名の新人を迎えての入社式。期待と不安、ワクワクとドキドキを表現する彼らの言葉に、かつての自分を思い出した。
社会人デビューはもう20年以上前だが、その日のことをおぼろげながら覚えている。前日の学生最終日、とても憂鬱(ゆううつ)だったと記憶している。いよいよ明日からか…期待よりも不安や学生時代への懐古の気持ちが大きかった。社会に出るのに後ろ向きだったのかもしれない。
出社し、同期と出会い、入社式では多くの先輩社員や役職のある偉い人の話を聞き、「後戻りはできないんだ、やるしかない」と腹をくくったことも同時に思い出した。社会人デビューは誰しも経験する。「入社初日」というのは、人によっては転職をすることで何回も経験できるだろうが、「社会人初日」は誰しも人生で一度切り。様々な形があるだろうが、やはりその日は特別だ。
4月1日、2名の学卒新入社員を迎えての入社式。 |
新人の頃に抱いたワクワクドキドキは、ずっと持ち続けられないものの、時折思い出すことで気分が若返る気がする。
ところで、世の中の価値観が変化する一つのたとえで、「モノからコトへ」というのがある。消費者の欲求が、モノを所有することよりも、「どんな体験が得られるのか」というワクワク感や感動・驚きにシフトしているという。スマホの普及や通信環境の変化、世の中のデジタル化がこの価値観を生んだともいえるが、社会がある程度成熟し、人は「便利さ」よりも「面白い」「楽しい」を求めるようになった。
新人の頃に抱いた「ワクワクドキドキ」と、消費者のニーズとしての「ワクワクドキドキ」。同じ「ワクワクドキドキ」だがその発生のメカニズムは違う。ただ文字にすると同じになるこの感覚を持つ人に、後ろ向きな人はいないだろう。年を重ねていっても一つでも多くの「ワクワクドキドキ」を持てるような生き方を常に心掛けたい。