先月の8月31日から9月2日の3日間に渡って幕張メッセで開催された展示会「スマートグリッドEXPO秋」に行ってきた。
コロナ禍初期ではこのようなイベントも軒並み中止となっていたが、最近では開催することも増えてきた。特に今回はカーボンニュートラル達成のための次世代電力や脱炭素経営など、社会の関心が高いテーマでの開催とあって、活況を呈していた。
多くの人で賑わっていた
基調講演の会場や企業出展ブースの横に併設された小セミナー会場では、途切れることなくセミナーが開催され、多くのビジネスマンが真剣なまなざしで聞き入っていた。これからの社会の変容を認識し、実社会においてその変化を敏感に感じ取れるセンサーを磨くためにも、基調講演をはじめ多くのセミナーや企業ブースを精力的に廻った。
これからの社会をどう実装していくか、出店企業も参加者も真剣そのもの
昨年政府が発表した第6次エネルギー基本計画(業界の人はこれを‘エネキ’と呼ぶようだ)では、2050年のカーボンニュートラル達成という目標からバックキャストし、2030年が一つのゴール(温暖化ガス排出2013年度比46%削減)と設定。具体的にはEVの普及や、電源構成における再生可能エネルギー比率を上げて化石燃料比率削減を明確にしている。その中で、今回多くの人が語っていた共通項に、「2025年が一つのターニングポイント」というのがあった。EV普及が加速化するのがこの頃であろうとの見立てだ。
そしてもう一つ。「エネキ」でも言われている次世代エネルギーの本命と目される水素。水素は現在でも製油所や製鉄所で副産物として製造されているし、メタンなどの化石燃料やバイオマスからも水素は作られる。水を分解し(H2O→H2とO2に分解)しても作られる。しかしながら、「エネキ」で想定する水素社会を実現するには、水素需要に対して国内のこれらの生産だけでは圧倒的に足りないということ。海外からの輸入に頼らなければ、水素社会は実現できないということだ。海外から大型専用船で運び、結節点である沿岸での貯蔵施設にて保管、そしてローリーやコンテナで陸送するという、現在の原油(石油)の輸送形態と同じサプライチェーンである。ただし、水素は気体のため、圧縮するか沸点であるー253℃に冷やして液化するかして輸送する必要がある。
水素ステーションには、水素を輸送して供給するオフサイト型と、その場で水素を製造するオンサイト型の2タイプがある。後者は高コストであり、いずれにしても水素ステーションの普及ははかどっていない。水素物流にも陸送のニーズが大きいことも分かったが、海外からの輸入を含め、そのインフラ整備にはまだまだ時間を要するといった印象だ。
クリーンエネルギーによるモビリティ―(自動車)の動力源の覇権争いはいずれ本格化する。長期に渡る時間軸であり、10年後と30年後ではその主役も変わっているかもしれない。電気か、水素か、はたまたバイオマス燃料か。CO2を出さない石油が開発されるかも。
全方位のセンサーを磨いて対応していきたい。