先日、休日に久々映画を観に行った。「シャイロックの子供たち」。あの池井戸潤原作の新作映画だ。「メガバンクから10億円が消える」というキャッチコピーで、登場人物の思惑が交錯するシリアスな展開ながらも、主演の阿部サダヲさんや上戸彩さんの個性豊かな演技もあって、全く退屈しない面白い作品だった。
「半沢直樹」など、池井戸氏の銀行を舞台とした作品は、本筋が銀行内部の不正を暴き真相を解明していくストーリーとなっており、多少の脚色はあろうがリアリティーに溢れている。一見あり得ないことが現実にはたくさんあるのだろう。これは銀行の世界に限ったことではない。
社内でコンプライアンスを標ぼうして数年が経つ。その教育の中で不正の三大要素(トライアングルともいう)というものがある。「動機」「機会」「正当化」。この3つの要素が重なったとき、人は誰しもこの不正に手を染めてしまうのだという。この3要素が映画にも上手く表現されていた。
「動機」:不正を働く動機がある
「機会」:不正を起こせる機会や環境がある
「正当化」:自分勝手な理由を付け、他人や周囲へ責任転嫁する
情報セキュリティの分野でも言われるこのトライアングルは、今日本各地で頻繁に起きている強盗殺傷事件の実行犯にも言えるのだろう。犯罪に手を染めるに至るまで、このトライアングルと無縁ではないはずだ。誰もがこのような環境に置かれると、人は豹変してしまうかもしれない。実行犯だってちょっと前までは普通の若者だったに違いない。つくづく人は弱い生き物、間違える生き物だと思う。
さすがに強盗殺人ともなれば同情の余地は全くないが、不正にも大小があり(この大小自体も自分の都合と言えるが)、時には不正だと認識せずにことを済ましていることもあったりする。
人は弱い生き物、間違える生き物との前提に立って、4月から始まる新年度もコンプライアンス意識や道徳を浸透させる活動を継続していく。基本的であるが故に軽視されやすいこの活動の大切さを、年度末のタイミングで観た映画からあらためて知ることができた。久々の映画鑑賞も悪くない。