メールが届いた。
「大学野球部の後輩で、父の経営する物流会社に4月に入社したものです。いろいろお話を聞きたく、一度食事でもいかがでしょうか。」という内容のものであった。
学年は5つ下。学生時代は重なっておらず面識はないが、間の学年の後輩が「東京で物流会社をやっている先輩がいるから話してみたら?」と間を取り持ち、メールをしたのだという。数日後に東京で会うこととなった。
後輩といえども初対面。野球部の話では事欠かないだろうけど、あくまで物流業界のことや経営者としての話を聞きたいのだろう。失礼のないよう、その後輩の会社のホームページを見て準備した。
ホームページを見ると驚いた。規模は当社と比較にならないほど大きな会社。本社は近畿圏だが事業は他方面に渡り、営業拠点も関東を含め広範囲に渡っている。逆にこちらの方がいろいろ学べるのではと、わくわくしながら当日を待った。
当日はその後輩がさらに一つ下の、これから物流会社を引き継ぐ我々と同じ境遇の後輩を引き連れ、3人での会食となった。
まずは簡単な自己紹介から。最初にメールをくれた後輩は親の会社に入るまで大手商社で11年間働き、さらに最後の1年は管理職だったという。もう一人の後輩は野球の夢を諦めず、大学卒業後も独立リーグでプレーしていたとのこと。
後輩2人とも乾杯時は緊張した面持ちであったが、そこは同じ野球部出身で物流に携わり、そして社業を引き継ぐ同じ立場。そこに先輩・後輩はなく、最初のこわばった表情がほぐれるのに時間はかからなかった。そして最終的には、意見交換会という名の飲み会を定期的に開催することを約束した。
2人とも今の会社に入って間もない。しかし不安よりも、これからの未来へ向けて会社をどうしていくか。そんな話を幾度となく口にしていた。2人とも希望に満ちた目をしていた。
翻って今の自分はどうだろう。会社に入った頃の初心を忘れてはしないか?
それに気付かされたことが、何よりも収穫だったかもしれない。
2人が宿泊するホテルまでタクシーで送り届けることに、乗り込んで間もなく2人とも睡眠モード。どうやらお酒には強くないらしい。
唯一、先輩として面目が立ったなあ、とタクシーの中で一人ひそかにほくそ笑んだ。